チャンギ空港の合理的なビジネスモデル

世界空港ランキングで、シンガポールのチャンギ空港が6年連続でトップを維持しています。シンガポールの国土面積は東京23区とほぼ同じ広さで、人口は540万人の小さい都市国家です。この小さな国の空港には毎年6,000万もの人が訪れます。

また、人口540万人のシンガポールにとって5万人以上の雇用を生みだしているチャンギ空港は経済とは切り離せない関係です。

チャンギ空港はチャンギエアポートグループ(以下、CAG)が運営をしています。CAGはより効率的にチャンギ空港の運営、管理をするために立ち上げられた空港特化型組織です。

CAGの財務諸表を見ても、営業利益、ROA、キャッシュ・フローも問題なく、毎年着実に収益をあげています。

その他、個別のP/L、バランスシート、キャッシュ・フローはこちらから閲覧できます。

国土面積は540倍、人口1億人を超える我が国の主要空港である成田空港と関空の利用客は合わせても6,000万人なので、いかにシンガポール・チャンギ空港の運営が卓抜しているか分かります。

着陸料を低コストに世界中から航空会社を集客

着陸料とは?

飛行機が空港に着陸するごとに航空会社へ課す料金です。着陸料は各空港にとって大きな収益源になりますが、チャンギ空港はあえて着陸料を下げ、航空会社の負担を減らす事によって世界中の航空会社を呼び込むことに成功しています。

シンガポールのチャンギ国際空港では長距離便を誘致するため9時間を超える直行便の着陸料を半額にしている。さらに、航空会社の搭乗手続きの効率化をサポートするほか、同空港で乗り継ぐ搭乗者数が増加した航空会社に報奨金を支払う。

図にある通りシンガポール・チャンギ空港の着陸料金は日本の空港の半額以下です。

<新関西国際空港株式会社のデータを元に作成>

近年、日本の空港もようやく重い腰をあげて着陸料の値下げに踏み切りました。

低賃金労働力をフルに活用

チャンギ空港には飲食店や店舗が合わせて500以上あります。また、同港には映画館やプール、庭園などの娯楽施設も豊富にあり、年間6,000万人以上の旅客が、これらの施設でお金を落としてもらう仕組みが構築されています。

この屋台骨を支えるのが5万人以上いる空港スタッフです。飲食店や店舗にはASEAN諸国(フィリピンやインドネシア、ミャンマー等)から来た外国人労働者が数多く働いています。人口の少なく賃金の高いシンガポールでは、外国人労働者は低賃金で雇う事ができるので重宝されています。

開港時はシンガポールも日本と同様に着陸料や駐機料依存したビジネスモデルでしたが、現在では店舗賃貸や営業許可料などの航空関係外収益が5割を超えるようなりました。また、航空関係外収益は、原油高などに苦しむ航空会社への減免措置の原資にあて、さらに航空会社を呼び込むという好循環ができあがっています。

24時間前からチェックイン可能

多くの空港がチェックイン時間を出発時刻の2〜3時間前としている中、チャンギ空港は12時間〜24時間前からチェックインが可能です。

チャンギ空港には、娯楽施設、ショッピング、レストランや仮眠スペースがあるので、空港に早く到着をしても退屈をする事がありません。そればかりか、空港滞在時間が増えれば、そこでお金を使う人が増えるので、早めに空港にチェックインしたい人、空港双方にとってメリットになります。

チャンギ空港は天井が広く、掃除も行き届いているので、長く居ても全く苦になりません。

航空会社によってアーリーチェックインの時間が変わります。以下URLから何時間前にチェックイン可能か調べることができます。
http://www.changiairport.com/en/passenger-guide/departing/checkinearly.html

需要を見込んで、段階的にターミナル数を増設

経済成長が続く中国やASEAN諸国では、所得の向上とともにアッパーミドル層を中心にした海外旅行の需要が増加してます。

その需要に合わせるかのように、チャンギ空港のターミナルも段階的に増設しています。

チャンギ空港は、開校当時の1981年はターミナル1のみの運用でしたが、1991年にターミナル2、2008年にターミナル3、そして2017年にターミナル4が開設されました。

また、2025年には新しくターミナル5が完成予定です。同空港の取り扱い能力は現状の倍以上に増え、年間約1億5千万人の利用が可能になります。

外国からの技術移転を推し進め徹底的なコストカットを図る

チャンギエアポートグループは、アジアの航空市場は急成長し今後20年間、年3~4%の利用者が増えると予想しています。前述の通り、新しいターミナル建設のため数百億円の設備投資をしています。労働リソースも限られているので、外国から最新技術をいち早く取り入れて実際に運用しています。

2017年に新設されたターミナル4はあらゆる業務を無人化しています。ターミナル4のオープン前までに空港職員、またボランティアの参加を得て100回以上、運用試験を行ってきたそうです。

  1. 自動チェックイン機でパスポートをスキャンして、チェックイン
  2. 預け入れの荷物も機械を使ってチェックイン
  3. 出国審査はパスポートをスキャンし、指紋認証+顔認証で完了

と、徹底的に業務を効率化しています。ターミナルには清掃用ロボット納入をして徹底的なコストカットを図っています。


一瞬の成功を目指すのではなく、継続して収益を生み出すかどうかにフォーカスし、とりあえず作ってみて、ダメなら取り壊す。シンガポールは、そうやって成長してきた国家なのです。

日本もまだまだチャンスはある

「アジアのハブ空港」という面では、完全にチャンギ空港や仁川国際空港にお株を奪われてしまいました。しかし、シンガポールと比べても、観光地としてのポテンシャルは日本の方が上です。

日本には歴史、建造物、文化、食など誇れるものが既にあります。毎年、訪日外国人の数も増えています。今後もアジアから観光客はますます増えるでしょう。

あとは国の玄関口である空港の在り方を抜本的に改革できるかどうかです。日本にもまだまだチャンスはあります。

参考

チャンギ空港、使用料低減 シンガポール サービス強化で旅客獲得
http://www.sankeibiz.jp/macro/news/140701/mcb1407010500019-n1.htm

空港着陸料
https://www.nikkei4946.com/knowledgebank/index.aspx?Sakuin2=916&p=kaisetsu
 

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またよし れい

執筆者:またよし れい

1983年、東京都葛飾区生まれ。アメリカのカレッジを卒業後独立。

2010年よりブログを立ち上げ、現在はブログ発信を中心に世界を旅しながら仕事をしている。

著書に『C言語すら知らなかった私がたった2か月でiPhoneアプリをリリースするためにやったこと』、『Facebookコミュニティ成功の法則』などがある。

これから起こる事を予想できる人間は居ません。唯一わかっているのは、人間は誰でも必ず死ぬという事だけです。僕は何度も言っていますが、「今」を楽しめない人は、この先の人生も楽しめないと思います。人生は「今」の連続で、その延長線上に未来はあるのです。過去に嫌な思い出があっても、「今」を楽しく生きる事で、過去の事実は変えられなくとも、過去の意味は変わってくるんではないでしょうか?

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